今日も青い空  白い雲  セミの声

なのにこんなにも心地の良い風  鈴虫の声

もうすぐ 夏も終わり。





光火。






「花火」
「ん?」



その日は夏休み最後の日。そして最後もオジイの家。
佐伯と樹は二人で縁側に座っていた。



「花火 しようよ」
「じゃあ、皆も…」
「二人でやろう?」

ね?と、佐伯が付け足して樹に問う。
樹は皆でやる方が楽しいのに…と 内心思いながらも、俯いた。





「どこらへんでやるのね?」
「煙が近所迷惑になるからね、なるべく川の近く」



芝の道を歩く二人は 一列になって語り合う。
佐伯の右手にはいっぱいの花火 左手にはライターとロウソクを持って。
樹は右手だけにバケツと懐中電灯を持っていた。

時刻は夕方の6時55分。
次第に辺りが暗くなり、灯りのない川の道の周りは 黒で覆われ始めた。
その暗闇に樹は目が慣れなく、転びそうになる。
しかし、佐伯が気付き すぐに樹の腕を掴んだ。
手に持っていた花火は 見えない芝の上にガサ、と音を立てて落ちる。

「あ…ありがと…」
「大丈夫?」
「何とか…」

そう云って、樹はバランスを保とうとする。
だけど
佐伯は 何時まで経っても掴んでいる腕を離さない。
寧ろさっきより強く掴んでいる様だった。

「サ、サエ…」
「…え?」
「い…いた…」
「え…?  あ!ご、ごめっ…!!」

樹の声に佐伯は 慌てて手を放す。
 
何秒か 沈黙が走った。

佐伯は川の方を見ながら 樹はその逆の道を見ながら

お互い 逆に顔を向かせる。


そして

「樹ちゃん…」
最初に佐伯が声を発した。
「ん?」
「ごめんね…」
「んーん…。気にしてないのね…」
こっちこそ ごめんなのね。

後から言葉を付け足して 樹は微笑む。
だけど 顔の熱さは引かなくて
本当にドキドキして
転びそうになったからとかじゃなくて
本当は
本当に




見   え   て   な   い   よ   ね   ?





自分の顔。自分の顔の赤さ。
見られてないよね?見えてないよね?
そう思っても
今はただ 暗くなってくる周りに頼る事しか出来なくて
樹は顔を下に伏せ、持っているバケツと懐中電灯を 両手で握った。

佐伯は 樹をただ見てることしか出来なくて。
暗くなってくる周りの中で 見ることしか出来なくて。
その後 意地悪く クスリと笑う。


「樹ちゃん」
「…何ですか」
「手、繋ごう?」


は?



一瞬、思考回路が止まった。
何を云ってるのか分からなかった。

だけど

意味が分かって
そしたら何だか恥ずかしくて
更に顔が熱くなって
更に顔が赤くなったのが分かった。

繋ぎたくないのに

暗闇になりかける中で はっきり
差し出している手を見つけた。
その手を見て 無意識に手を差し伸べる。
佐伯の手の平に 己の手を置いたら
佐伯はギュッ、と樹の手を握るから
樹も佐伯の手をギュッ、と握り返した。


「行こうか」
そう 意地悪い声で 云って
「…ん…」
納得のいかない声で 返した。








「ここらへんで良いかな?」
そうして着いた場所は 家も何も無い
見えるのは 道と田んぼだらけの川岸。
辺りはすっかり真っ暗で。
芝の中で 鈴虫が リンリンと鳴いていた。
「何も見えないのね…」
と、樹は懐中電灯を点けようとした。
「あ、ダメだよ!!」
「え?」
佐伯は慌てて大声で点けるのを止めた。
「点けたら逃げちゃうよ?」
そう云った途端 周りからほのかな光が湧いて来る。
「…ホタ…ル…?」
「うん」
「何で…こんな時期に?」
「さぁ?分からないけど」
「綺麗…」
「うん」
緑に近い淡い光は 二人を照らして 
周りも淡い緑になって 光りだす。
「これじゃあ…花火やれないのね…」
眼を丸くさせて 感動していた樹だが、花火の事も考え
心配そう顔つきに変わる。
「そうだねぇ…でも」
蛍は淡い光を発しながら 川の水面まで向かっていった。
「行っちゃった…」
「でも、花火は出来るね」
「まぁねぇ…」
樹は名残惜しそうに 蛍の行った跡を指で辿る。
それを見た佐伯は またにこりと笑って。
「花火しよう?」
蛍の代わりになるかは分からないけどね。
そう云い、花火を袋ごと樹に差し出す。
樹は ポカンとした後 また微笑んで
「そなのね…」
ガサ、と音をたてながら 樹は差し出された花火を受け取った。






パチパチ と花火の音が聴こえる。
炎が赤くなったり 青くなったり 緑になったり 黄色くなったり
様々な色に変化するのを見て 二人は笑った。
そして その光は 消える。

「あー…消えちゃった」
早いなぁ、と云いながら 佐伯は消えた花火を水の入ったバケツに入れる。
「…あ、スゴイ!サエ!ホラ見て!!」
樹が大声で叫んで 佐伯を呼んだ。
佐伯はソレに気付き、大声がする方へ振り向いた。

その時見えたのは 蛍の光の様な炎

緑の淡い色

「ぅわ…蛍かと思った…」
「な!綺麗なのね!」
そう云って 大きく笑う 彼が愛しくて
蛍に似た光の炎が 淡い緑で彼を照らして


我慢なんて出来なくて























ジュッ



























「あ…消えちゃっ…」



火が消えた 周りはとても暗くて
何も見えなくて

感じたのは

























「…サエ…?」


























人の体温と 触れるだけの唇。
その後 抱き締められる感触。










「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!??」
「これくらい、良いでしょ?」




そう云って また意地悪く笑う。
持っている 火の消えた花火は 芝の上に落として。
行き場の無い手が 佐伯の服を掴む。



「………っ…ダメ……!!」
「何で?」
「嫌だから…」
「じゃあ、この手は何?嫌だったら離して?」
「―――――――――っ!!!!」


あぁ 楽しい。



苛めれば苛める程
可愛いくなって。


優しくすれば優しくする程
愛しくなる。






もう本当に














何時になったら気付くんでしょう?























「可愛いね、樹ちゃんは」
「嬉しくないのね…」
「腕掴んだ時も、手繋いだ時も、顔赤くさせてさ」

ん?

「……は?」
「樹ちゃん 知らなかったでしょ?」
「……え?」
「俺 気付いてたよ」
「……な…!!」
「暗いからって 見えないわけ無いでしょ?」

にっこり

「俺 目良いし♪」
「……………」
「暗い所でも、結構見分けつくよ。例えばさ、この間の夜二人で…」
「死ね―――――――――――――――――――――――――っっっ!!!!!!!!」

シ―――――――ン

サワサワ

リーンリーン

「…………もっ……ヤダぁ……!!」
「……くっ……アハッ…ハハハ……」
「わ、笑うな―――!!!クソサエ――――!!!!」
「アハッ……ごめ…ハッ…ヤバッ…樹ちゃん…可愛いっ…!!」
「―――――――――!!五月蝿いのね―――――!!!」

リーンリーン

サワサワ









「…ハハッ…ハ…………っ…………あー…よく笑った…」
「……そりゃ良かったのね…」
「じゃ…帰りますか」
「線香花火は…?」
「んー?また後でヤレば良いでしょ?」
「あ、あー…」

ん?

「あ、あのー…虎次郎さん?」
「何ですか、希彦さん?」
「ヤ…ヤレば…って…」
「ヤロうねvv線香花火vv俺特別のvv
!!??
「さ、手繋いで帰ろっか?」
「………………………大っ嫌いなのね………………」

ぎゅ

リーンリーン

サワサワ




心地の良い風
鈴虫の声
















 










「樹ちゃん」
「ん?」
「愛してる」
「有り難う」
「またやろうね」
「何を」
「花火」
「…うん」































夏休み最後の日。






終。





こめんつ

夏休みがもっと欲しい話。(関係無ぇ)
無駄に甘い。イチャイチャ。アホップルめ…!!(ヲイ)
少しはサエイツに見えるか…な?(自信無い)
て云うか、こんなサエイツはダメですかー?(ダメでーす)
せ、線香花火…樹ちゃんぽくないですか!?(何)
可愛らしくて儚くて(お前の思考が分かんねぇ)

つか、オジイ家の周り…無駄に田舎してます。(スイマセン…)
アタシ的オジイ家の周りは、アタシのお婆ちゃん家なんです。(知らねぇよ)

2003.9.2





あんた、すげぇよ(なご)

戻るのね?



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